■ 腹部臓器由来

胃 十 二 指 腸 潰 瘍

 胃、十二指腸の内面を構成する粘膜が障害されて生じる病気です。障害が生じるきっかけとして、ストレス,薬剤,細菌(ピロリ菌)などが知られています。潰瘍が生じた部位の粘膜は欠落してしまうため、胃酸や食事の刺激によって痛みを起こします。みぞおちの付近を中心とする鈍痛,さしこむ痛み,吐き気,食欲不振などが主な症状です。しかし潰瘍病変の分布や重症度によって、痛みの強さや伝わり方は様々です。
 みぞおちは心臓のすぐ下の位置にあたるので、潰瘍による痛みが心臓疾患由来と誤解されることも起こりえます。食事をする前後で痛みの強さに変動が見られるときは、胃十二指腸潰瘍である可能性が高いと考えられます。胃十二指腸潰瘍の診断には、X線透視検査(バリウムを飲んでレントゲン写真をとる)または内視鏡検査が行なわれます。粘膜組織の一部を顕微鏡検査用に採取できるため、内視鏡検査のほうがより信頼性が高いといえます。潰瘍病変が深く重症の場合には、胃,十二指腸に孔があき(穿孔)、腹膜炎に至る危険があります。しかしほとんどの場合、胃酸分泌を抑制する薬と粘膜面を保護する薬を数日間服用することで、症状は改善します。痛みがとれても潰瘍病変の完全な治癒にはさらに時間がかかるので、継続した治療が必要です。また、再発予防にむけて食事,飲酒などの生活習慣を改善することも、重要な治療目標となります。
[佐伯文彦・東芝病院内科]

胆 道 系 疾 患

 胆道系疾患には、胆石や胆嚢炎そして胆嚢癌など胆嚢の病気のほかに胆管の病気があります。ここでは比較的頻度の高い胆嚢炎を中心にお話します。
 どうして胆嚢炎と心臓病とが関連があるかというと、そのひとつは胸痛を伴うことがあり、ときどき心臓病特に狭心症や心筋梗塞と区別がつかないことがあるからです。さらにやっかいなことに、本当の病気は胆嚢炎にもかかわらず、胸痛という症状だけでなく、心電図まで狭心症発作や心筋梗塞に似た心電図になることがあります。ということは、胆道系の病気を心臓の病気とまちがえたり、その反対もありえるということです。ここで胆嚢炎の一般的な症状についてお話します。
 ふつう痛みは上腹部の不快感や鈍痛で始まり、しだいに右側(右季肋部)に移動してきます。もちろん激痛の場合もあります。吐き気や嘔吐を伴うこともしばしばです。この上腹部の痛みは胸の痛みとして感じられることも多く、心臓が悪いと思い込んでしまう場合もあります。さらに、胆石の痛みの場合には、狭心症の薬であるニトログリセリンでよくなってしまうことがあります。したがって上腹部の痛みの場合、あるいは痛みの場所が広すぎて胸部か腹部か分からないような時は早目に医療機関を受診したほうがいいでしょう。特に吐き気や嘔吐を伴う時にすぐに胃腸の病気と判断するのはよくありません。
 自分で病気の種類を判断せず、症状をできるだけありのままに担当の医師に伝えることが重要です。当然ですが、症状は似ていても診断名が異なれば治療も全く異なるからです。
[鈴木真事・東邦大学大橋病院第三内科]

急 性 膵 炎

 急性膵炎は、アルコールの飲み過ぎや胆石などの原因により、膵臓の消化酵素が活性化され、膵臓自体が消化されるために起こる病気です。病変が膵臓の局所にとどまる軽症のものから、活性化された膵酵素およびその有毒産生物質が血中や腹腔内にまで波及し重要臓器障害や感染を合併する重症のものまで多彩な病像を呈します。
 急性膵炎の臨床診断基準は、1990年に厚生省特定疾患「難治性膵疾患」調査研究班により作られた、(1)上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある(この上腹部痛が胸痛と自覚されることがあります)、(2)血中、尿中あるいは腹水中に膵酵素の上昇がある、(3)画像で膵に急性膵炎に伴う異常がある、の3項目です。本症は発症後の経過時間と重症度により病態が異なります。激しい腹痛とショックなどを伴い全身状態が重篤なわりには腹部所見が乏しいなど、自他覚所見が解離することもあります。発症直後から1週間以内では上腹部痛、ショック呼吸不全、腎不全などが中心で、2週間以降では感染、多臓器不全、播種性血管内凝固症候群(DIC)などが主な症状となります。重症急性膵炎では、ショック・肺水腫による呼吸困難・チアノーゼ・乏尿が20〜40%、錯乱・幻覚などの意識障害が10〜20%、敗血症やDICによる出血傾向が10〜20%にみられ、死亡率は30%に達します。したがって、できるだけ早期に的確な診断を下し、早く治療を開始する必要があります。
 急性膵炎の鑑別診断としては,穿孔性の胃または十二指腸潰瘍,大動脈瘤破裂、腸間膜動脈梗塞,閉塞性イレウス,子宮外妊娠,胆石疝痛,虫垂炎,および憩室炎,下壁心筋梗塞および腹壁の筋肉あるいは脾臓の血腫などがあります。
[宝田 明・兵庫県立姫路循環器病センター循環器科]