■ 食道由来

食 道 逆 流

 食道逆流は、胃から分泌された胃酸・ペプシン等が食道内に逆流し、食道粘膜に炎症・びらん・潰瘍が起こる病気です。症状は主に胸部、上腹部にかけて起こる灼熱感(胸やけ)として自覚されます。食道粘膜を攻撃する因子として胃酸・ペプシン等の消化酵素があり、それを防御する因子として逆流を防ぐ下部食道括約筋がありますが、胃酸・ペプシンが過剰に分泌され、下部食道括約筋の働きが低下する場合に食道逆流による炎症が起きます。診断は内視鏡(胃カメラ)、食道・胃の運動機能測定などによって行われます。基本的に良性の病気ですが、再発を繰り返し、難治性の経過をたどる場合もあります。
 治療は1)下部食道括約筋の働きを低下させる脂肪、チョコレート、香辛料の摂取の制限、飲酒の制限、大量食事摂取の制限、2)禁煙、3)肥満、便秘など腹圧を上昇させる因子の治療、4)夜、頭を高くして寝る、5)下部食道括約筋の働きを低下させる可能性のある薬の中止などの一般的療法と、胃酸分泌を抑える薬、食道粘膜を保護する薬、消化管の運動機能を改善させる薬による薬物療法があります。症状が軽い場合は日常生活における一般的療法で改善しますが、症状が強く、また内視鏡で食道炎の所見がある場合には薬物療法が適応になります。
[田辺一明・神戸市立市民病院循環器センター内科]

食 道 痙 攣

 食後、胃内容物の食道への逆流や食道の蠕動運動の異常などにより胸痛が起こることがあります。食道の障害部位により痛みの存在する場所は異なりますが、食道粘膜は上部が中下部に比し痛みに対して敏感なため、多くは胸骨下部や心臓周囲に“やけつくような、あるいはつまるような感じ”を訴えます。これは狭心症などの心臓痛と類似しています。食道からの疼痛は交感神経を通じて伝えられます。食道を取り囲む食道神経叢(しょう)に入った痛みの刺激は下顎交感神経、胸部心臓交感神経を介して脊髄に伝えられます。
 食道痙攣は、食道運動を支配する自律神経(迷走神経)の局所的な緊張異常により食道の一部が痙攣をおこす病気で、嚥下(食物を飲み込むこと)とくに冷たい液体を飲み込むことが誘因になることが多いとされています。痙攣をおこした食道はその部分が紡錘状になって細くなり、食物の通過障害がおこります。その結果、胸痛や胸部絞扼感(胸骨下部のつまるような感じと表現されることが多い)のほか嚥下困難、逆吐などの症状がでます。その原因は様々ですが、一般的には精神的ストレスなどからくる心因性のものが多くみられます。
 基礎疾患がある場合には、てんかんや髄膜炎などの中枢神経疾患、ニコチン中毒、外傷(頭部、脊椎、胸部)などのほか食道癌や胃癌が原因となっていることもあり、食道X線検査や胃内視鏡検査が必要となります。治療には鎮痙剤を用いますが、最も重要なのは誘因の除去や基礎疾患の治療です。心因性のものは治癒しやすいとされ、ストレスを避け精神的安定をはかることが最善の治療といえます。
[都崎祐美・兵庫医科大学第一内科